思想文化領域
市民政治思想研究
グローバリゼーションが進展する中で、「市民社会」の政治思想の意義は極めて大きい。現代社会における「自律した市民の自発的な政治参加」を考察するために、ワイマル共和制期の市民政治思想、とりわけ、M?ウエーバー、F?ノイマン、E?フレンケル、O?キルヒハイマー、C?シュミットなどの政治思想を取り上げ、その今日的意義を検討する。さらに、「差異の政治」「承認の政治」を含む現代デモクラシー論についても考察する。
日本文化研究
「神道」が「悠久の太古」からの日本の固有宗教であるという戦前からの見解は成り立たない。しかしながら、「神道」は仏教の一部門であり、独立した宗教ではなかったという黒田俊雄氏の学説も、宗教の定義のあり方や世界の諸宗教の様態との比較を通じて批判する余地が十分にある。近年の古代史や考古学の成果を踏まえて「神道」の形成過程について講義していきたい。
「神道」の形成は律令制国家の成立にともない、在来の神祇祭祀や習俗を柱に、仏教や道教、大陸の民間習俗を取り込みつつ、中国の皇帝祭祀制度を規範として組織化されたことを契機としており、さらに平安時代における穢意識の発達、神国思想や仏法忌避制度の形成をもって、その確立をみたことを論じていきたい。
英文学研究
主に19世紀以降の英詩を対象とする。とりわけ、19世紀イギリスロマン主義文学、20世紀イギリス象徴主義文学、20世紀末から21世紀初頭にかけてのアイルランド民族運動と文学運動との関連を重点的に取り上げる。一方で詳細なテクスト分析を行い、同時に、現代文学理論をふまえた学際的な考察を行う。
現代英文学研究
現代のイギリス文学の中でもとりわけD.H.ロレンスの作品を中心に見ていくことで、想像力と文学というテーマで作品等を論じていく。
昨今の日本社会において「絆」という言葉をよく耳にするようになったが、それは裏を返せば、様々なもの同士の「絆」が今日、喪失しつつあるということに他ならない。同様の問題意識を20世紀初頭にあって既にロレンスが持っていたことを想起することは決して無駄ではないだろう。人間がバラバラになってしまったからには「個人は今や愛し合えない」という悲劇的な時代認識に至ったロレンスは、様々な物語の中でいかなるメッセージを投げかけ、どのような救いの道を見出しているのだろうか。ロレンスと言えば男女の性愛を描いた作家として名を世に広めた作家であるが、従来の男女関係に焦点を当てた表層的なプロット重視の読みを克服し、作品の象徴など、深層部分に踏み込み、物語に新たな視点を投げかけると同時に、現代社会に訴えるロレンスの問題提起――大地(森)との「絆」と、つながりの(エコロジー的)想像力の回復の必要性――に耳を傾けることで、ロレンスの現代的意義を探りたい。
中国文化研究
20世紀の中国文学芸術運動、特に1930年代の中国近代文学芸術運動を中心に体系的に講義する。主要な作家、作品、思潮、流派等の紹介を通じて、当時の文学芸術を概観する。
中国語文化研究
地域の「市民言語文化」に資するため中国語の文化、特に文化の中枢を言語の体系としてとらえる立場から中国の言語分野を研究する。中国語は古代から現代まで長い歴史を持ち種々の変化を重ねて発展してきた。そして今日の中国語は、過去のさまざまの変化を引き継いだ結果話し言葉としては無数の方言に分かれている。本講義では、中国語における音韻の変遷発展の歴史と現代中国語方言における音韻の多様で複雑な分布状態を互いに密接な関係があるものとして論じ、この視点から中国の言語文化の歴史と現状について考察を深めて行く。
中国哲学思想研究
中国後漢時代の大思想家哲学者である王充および著作『論衡』を研究する。
中国近世近代社会史研究
課題「近代中国社会における日本人及び日本人団体」
本科目は19世紀後半から20世紀前半の中国における日本人と日本団体の動向を解明し、近代中国社会における日本の位置を理解することを目的とする。
授業では、最初に日清戦争前後からの中国に滞在した日本人?日本人団体に関する研究文献を輪読し、研究史に理解を深める。次いで、中国語?日本語の日本人?日本団体に関する一次史料の輪読を通じ、その実態に接近する。
米文学研究
論文作成のための詳細な個別指導を継続的に対面形式で行う。個別指導に沿った加筆訂正を原稿に加え続けることにより、論文を無理なく完成させることを目指す。また、論文執筆に資する文献の購読を継続的に行う。
比較文化研究
This course will start with a close examination of the roots of North American and Japanese Cultures by an investigation, in English, of key patterns of communication and values to illustrate the deep cultural differences that exist between the two countries. Initially, a survey and analysis of the dynamics of the relationship between both countries will be conducted by reading key literature and scholarship on different facets of both societies. As the course progresses students will explore these differences to grasp the fundamental challenges that create misunderstandings and make it difficult to effectively communicate across these cultures in a global setting. Finally, they will consider effective models of communication in cross-cultural settings and then analyze and present their findings. During the final phase of the course students will lead the discussion in presenting their own interpretations of materials from the course.
比較文学研究
This course will familiarize students with the theories, concepts, and critical perspectives that are central to the discipline of comparative literature and also give them practical opportunities to apply their knowledge by writing a term paper on a comparative literature subject of their choice. This course will investigate the nature of literature and comparative literature and consider the following comparative literature-related topics: The European tradition; The US tradition; The Japanese tradition; foreign reception issues; imperialism and post-colonial perspectives; and recent trends and new areas of inquiry.
人間環境研究
東アジアは陸の視座より概観するとユーラシア大陸の東端に位置するが、海の視点に目を移すと東南アジアやオセアニアにつながる環太平洋文化圏の一端を担っていることがわかる。本講義ではフィールドワークによる地域研究を学ぶ。特に文化と自然の相互作用を重点におき、交易?生業?歴史?環境?認知などを軸とした、生態人類学的方法論を探求する。また実践の場においてこうした知識を生かしながら、草の根レベルでコミュニティ開発を効果的にすすめるための国際協力モデルプランを検討する。
多文化コミュニケーション研究
日本語によるコミュニケーションと他言語によるコミュニケーションの異同を、意味論?語用論、特にポライトネス理論や「公的自己」「私的自己」の概念を利用して分析する。
さらに、近年の生成文法理論における「統語構造地図(cartography of syntactic structures)」によって、日本語?英語をはじめとする諸言語の談話的要素の分布と機能について考える。
それらの研究を通して、言語と文化の関係について考える。
文化交流史研究
江戸時代における北部九州は、長崎からの中国?西洋文化の中央への伝播のルートであるとともに、これらをいち早く受容しつつ独自の地域文化を形成してきた。ここでは、長崎?長崎街道の文化事象に注目するとともに、前近代から近代に至るヨーロッパ?アジアの文化交流と日本社会の西欧化というテーマを歴史学の方法論から考察したい。すなわち明治期以前の日本の社会における西洋文化の受容について、18世紀後半から19世紀に至る「蘭学」の多様化と発展を取り上げ、市民革命?産業革命を経て成立したオランダ本国の中産市民階級の文化知識が日本では封建制下の知識層?領主層を主体として受容され、近代化?西洋化の前提としての国民意識や近代的世界観?人間観を形成していった過程を考察したい。